ひとり会議

新しい意識をそっと伝えるブログ

悪夢のような現実─『夫のちんぽが入らない』を読んで

 

いま話題となっている本が、

『夫のちんぽが入らない』。

『君の膵臓を食べたい』以来のタイトルの破壊力。

表紙を見る限りはそんなタイトルの本だとは思わなかった。

 

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タイトルに惹かれて軽い気持ちで読みはじめたら、

止まらなくなり、一気に読み切ってしまった。

壮絶すぎて、まるで悪夢を見ているようだったが、

すべて著者こだまさんの現実らしい。

 

あらすじは特設サイトから引用します。

同じ大学に通う自由奔放な青年と交際を始めた18歳の「私」(こだま)。

初めて体を重ねようとしたある夜、事件は起きた。

彼の性器が全く入らなかったのだ。

その後も二人は「入らない」一方で精神的な結びつきを強くしていき、結婚。

しかし「いつか入る」という願いは叶わぬまま、

「私」はさらなる悲劇の渦に飲み込まれていく……。

交際してから約20年、「入らない」女性がこれまでの自分と向き合い、

ドライかつユーモア溢れる筆致で綴った“愛と堕落”の半生。

“衝撃の実話”が大幅加筆修正のうえ、完全版としてついに書籍化!

 

すべての悲劇は「ちんぽ問題」からはじまるのだが、

それ抜きにしても、

自分を認められない問題、母と子の問題、

女性は出産しないといけない問題など、

様々な問題が入り組んでいる。

この物語はこだまさんが18歳から20年までのことだ。

10代〜20代は「ちんぽが入らない」という個人的な問題に悩まされるが、

30代になると「既婚者の女性がなぜ出産しないのか」という

社会的な問題に変わっていくところが興味深い。

 

問題はなぜときかれたとき、

「夫のちんぽが入らないんです」と言えない不幸なのだが、

こだまさんが自己肯定感が低いことも

この物語に大きく影響している。

 

自己肯定感が低いことは「生きづらさ」と言い換えることができるだろう。

私も自己肯定感が低めだった若いころ(主に10代)を思い出し、

読んでて痛みや苦しみを感じる一方、首をブンブン振るほど共感した。

 

例えばこのような箇所にグッときた。

お饅頭に『駄目』の焼印を押される。

薄皮がじゅっと白い煙を上げて縮む。おもてに出ると、

鉄の焼きゴテを持った人たちが待ち構えている。

もう何も訊かれたくない。焦げたくない。

 

そんなに悩んでいるなら誰かに話したらいいじゃないかって

デリカシーのない人は言うだろう。

確かにそうなんです。それができたらどんなに楽だろう。

でもそれができないから生きづらいのです。

 

いま、こだまさんは夫との性行為は一切なく、

この問題を客観的にみれるようになったのだそう。

それを読んでとても安心した。

いつか、こだまさんが夫とちんぽの話で笑い合えるような

関係になっていることを願う。