再販制度が壊れた後の世界─「本の未来を探す旅 ソウル」から学ぶこと
最近読んだ本が内沼晋太郎さん(編著)の「本の未来を探す旅 ソウル」。
この本、出版社からの注文書が来たときから気になっていた。
なぜって他の国の本屋事情を知る機会はあまりないじゃないですか。
「誠品書店」がある台湾なら分かるけど韓国に「本の未来」なんてあるの?って思っていた。
ところがどっこい、
韓国ではいま、個性的な小さい書店が毎週のように生まれている「独立書店ブーム」真っ只中。
さらに大手の出版社にいた人が「ひとり出版社」をつくって独立し、おもしろい本をどんどん出版しているらしい。
お隣の国のことなのに全く知らなかった!
日本と韓国の本屋をとりまく環境についてまとめてみよう
日本と韓国の流通は大きくは変わらない。
基本的には委託販売(返品ができる)で、日本の「再販制度」(小売書店で定価販売ができる)のような「図書定価制」がある。
しかしつい最近まで18ヶ月以上たった既刊は割引ができた。そのため小さな街の書店は競争についていけず、たくさんの書店や出版社が消えることになった。
このとき韓国の出版は「一度滅んだ」と言われている。
そんな最悪の状況から制度が見直され、本の割引率がは10%までと定められたのが2014年。
小さな書店でも戦えるようになり、「独立書店ブーム」のきっかけとなった。
日本と違うところといえば仕入れだ。
独立書店の多くは出版社と直取引をしており、取次は通していない。
そもそも韓国には大きな取次がなく、大きな書店でも取次を通さず、出版社と直取引をするようだ。
日本で新刊書店をはじめるなら取次との契約は必須だ。
講談社や集英社が直取引をしているなんて話は聞いたことがない。
そして売れる本の配本数は取次次第となってしまうのが日本の現実…。
本の定価がなくなり「一度滅んだ」韓国の出版業界。
日本も「再販制度」がなくなれば、戦力のない本屋は滅び、地方の街には本屋が一軒もないという状況が当たり前になるだろう。
なぜ韓国の人たちは滅んだ世界でもう一度書店をつくろうと思ったのだろう。
「独立書店」のフロントランナーである「THANKS BOOKS」のイ・ギソプさんはこう言う。
「オーナーたちはお金をたくさん稼ごうというマインドじゃなくて自分の身の丈にあった経済の範囲で自分がやりたいことをやりながら文化的役割をも果たしていました」と。
文化的役割、お金にはならないが、これこそ書店の魅力であり、街から消してはいけないものなのだと思う。
日本も「書店は洛陽産業だ」という前に韓国に学ぶことがたくさんあるみたいだね☆