若林がキューバへ行った理由─『表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬』
オードリーの若様こと若林正恭さん(以下「若林」)がいつの間に新刊を出していた。
その名も『表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬』。
何となく買って読み進めるうちに、これはとんでもなく面白いぞと気づいて、最後にはなぜか泣けてきてしまった。
『表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬』(略して「表カバ犬」というらしい…)は、若林が5日間キューバへ一人旅に行ったエッセイ。
最大の謎はなぜ「キューバ」なの?であり、そこがこの本の重要なところである。
理由が出てくる箇所は4つあったが、読み進めるうちに真実が明らかになっていく。
始めにキューバへ行く理由が出てくるのは、旅行代理店のお姉さんに尋ねられたときだ。
「アメリカとの国交が回復して、今のようなキューバが見られるのも数年だと聞いたから」とテレビ番組のナレーションの内容をそのまま答えている。
ところで日本は資本主義国家であるが、最近世界は「新自由主義*1
「勝ち組」「負け組」「格差社会」という言葉が使われるようになったのもその頃からだそうだ。
「大企業に就職して出世したい。ブラック企業では働きたくない」
「スペックの高い人と結婚したい」
「インスタでよりよい自分を演出して、素敵な人だと思われたい」
そうなれない自分を卑下したり嘆いてみても、結局は人間がつくったシステムの中のこと。人間がつくったシステムの中で私たちは苦しんでいるに過ぎない。
「とにかく、このシステム以外の国をこの目で見てみない気がすまない。」
ということで社会主義国家であるキューバを選んだ。これが2つめの理由。
3つ目はキューバ滞在中、ガイドをしてくれたマリコさん(キューバ在住の日本人)にキューバに来た理由を聞かれて「広告がない街を見たかったからです!」と答えている。
「表カバ犬」はニューヨークに行ったときのことから始まり、ニューヨークの広告からは「やりがいのある仕事をして、手に入れたお金で人生を楽しみましょう」と絶えず言われている気がした、とある。
つまり広告は新自由主義の象徴として書かれている。
そして最後にもうひとつキューバへ行く理由があったのだが、これはぜひ本で読んでいただきたいので伏せておきます。
前作『社会人大学人見知り学部 卒業見込』といい、相変わらずタイトルのセンスがいい。
言葉選びのセンスがいいことは、以前『世界は言葉でできている』というテレビ番組でもよく知っていたが、例えば「笑っているようで、目が舌打ちしている」とかなかなか鋭い。